「ほう……。いいじゃないか、この控えめな色合い。」
本当はもっと、パキッとした「赤」になるはずだった。
だが、イトーヨーカドーの店員さんの言葉を信じ、着色料の代わりに手に取った**「苺の粉末」**。
「赤というよりは……淡い桃色。いや、ピンクと呼ぶには少し、はにかみすぎているな。
だが、それがいい。天然由来の証、素材の証。
鵜呑みにした自分の直感を、今は褒めてやりたい。」
(口に運ぶ)

「うん……美味い。自分で作ったんだから、美味いに決まっている。」
見た目は淡くても、味はしっかり「桜餅」。
香りが鼻に抜ける。この優しさは、人工的な色味には出せない芸当だ。
「ピンクというだけで、どうしてこうも心が浮き立つんだろうな。
春を感じてしまうのは、日本人の性(さが)か。
それとも、温もりを求める人間の本能か。
今の俺には分からないが……。
ま、美味けりゃ、それでいいじゃないか。」
周りを見渡せば、他の方々も手作りの品を頬張っている。
平和だ。穏やかな、いい昼時だ。
(ふと、会場の装飾に目をやる)
「そうか……。今日は誕生日会だったのか。
だからこのオヤツが、主役としてここに鎮座しているわけだ。納得した。」

「あれは……フラワータオルか。
なるほど、ブーケ仕立て。華やかで、それでいて実用的だ。
綺麗だなぁ。いいなぁ。」
「俺も、自分の誕生日が来たら、あんな風に祝ってもらえるんだろうか。
「ふぅ……。ごちそうさまでした。」
「苺の粉末、正解だったな。」