美味しいと美味しそうに見えるは違う

2025.04.11

 

ベテランの手つきで、それらが静かに重ねられていく。

 

  
卵を割り入れた。黄身が静かに広がり、粉と具材が混ざっていく。
カシャカシャとボウルの底をこする音が、空間に心地よく響く。

混ぜる。


ただそれだけなのに、この方の混ぜ方にはリズムがある。
雑ではない。でも、丁寧すぎもしない。
無駄を削ぎ落とした、生活の技術だ。

 


その理想を知っている手つきで、じっくり焼いていく。
今日の私は「火傷しないように見張り番をしながら写真を撮っている人」である。静かに美味しい音を聞きながら利用者とテレビて過ごす。

  
裏返されたお好み焼きが、ちょうどいい焼き目をまとって、しっとりと湯気を立てる。遠慮のない大胆な一筆。オタフクソース、これに限る。

 


その上からマヨネーズで格子を描く。かつおぶしが踊る。青のりが香る。

……うまそうだ。

上部へスクロール